〈書評〉億万長者の黄金律~名トレーダーから学ぶ投資の教訓

こんばんは、こばいんです。

皆さんGWをいかがお過ごしでしょうか。私は特に遠出もせず、のほほんとしています。そのおかげもあり、積読となっていたいくつかの書籍を読むことができました。

今回は、その中の一つ「億万長者の黄金律~名トレーダーから学ぶ投資の教訓」について、備忘録もかねて書評という形で記事にしたいと思います。

この本では、偉大な投資家について、その素晴らしい投資の実績を紹介するだけでなく、彼らの生い立ちや投資方針の背景にある考え方、さらには市場での立ち振る舞いなどを「お手軽に」学ぶことができます。

細かいことを申し上げると、邦題が「億万長者の黄金律」となっておりますが、本題が”The Great Investors”であることを鑑みると「偉大なる投資家の黄金律」の方が適当かなと個人的には思いました。「億万長者」というパワーフレーズを使う方が目を引くでしょうが…

さて、本書で登場する投資家は以下の8人です。なお、バフェット氏とマンガー氏はコンビで登場するので、章としては全部で7章となります。

  1. ベンジャミン・グレアム
  2. フィリップ・フィッシャー
  3. ウォーレン・バフェットとチャールズ・マンガー
  4. ジョン・テンプルトン
  5. ジョージ・ソロス
  6. ピーター・リンチ
  7. アンソニー・ボルトン

いわゆるバリュー投資家もいればグロース投資家も紹介されており、広く偉大な投資家を知ることができます。私としては、名前は聞いたことあるもののどのような人でどのような投資をしてきたか点について知らない投資家が多かったので、「へー、そうなんだ」という気づきが多い本でした。なお、私の主方針であるシーゲル流(配当再投資)に関する言及はあまりありません。

ですので、投資をはじめて日が浅く、過去から現在にわたって名が知られている投資家たちについて知りたい人にとってはおすすめできる内容だと思います。ただし、紙面の都合ゆえ、手軽に学べることができる一方、もっと深く学びたいという人にとっては物足りないかもしれません。

以下では、この本を通じて各投資家の個人的に印象に残った点を挙げ、彼らに共通する事項を最後に纏めとして考察してみたいと思います。

偉大な投資家たち

ベンジャミン・グレアム

20世紀の投資界における最高の知恵者とも呼ばれ、バリュー投資学派の主唱者であったのがベンジャミン・グレアム氏です。

彼の著作「賢明なる投資家」は今でも読み継がれており(私は図書館で予約待ちです笑)、あのウォーレン・バフェット氏も彼のもとで修業して自身の投資手法を磨いていきました。

本書を読む中で印象的だったのはその「安全第一」の考え方です。分析した企業価値と株価の間に充分な安全マージンがあってはじめて投資する、というのがグレアム氏の考える健全な投資の根幹となっています。そのためにも、当該企業の株を購入するよりもその所有権の一部を購入したと想定し、徹底的な分析をするわけです。そのような安全第一の悲観主義によって市場平均を上回るパフォーマンスを残しました。

また、グレアム氏は次のような言葉を残しているように、人間心理にも注意を払っていました。

株式市場は計量装置というよりも投票装置である

だからこそ、市場の判断に敬意を払う一方で、必要であれば距離を置く、という心の独立性を説いています。まあ、これが言うは易く行うは難しなんですけどね。

フィリップ・フィッシャー

フィリップ・フィッシャー氏は成長株投資の第一人者として名を馳せています(恥ずかしながら私は本書で初めて知りました)。

彼がキャリアをスタートさせたのは1920年代で、スタンフォード大学のビジネススクールが創設されたあたりで、上記のグレアム氏と同様に歴史を感じさせます。「フード・マシナリー」や「ダウ・ケミカル」、「テキサスインスツルメンツ」などへの(当時の)グロース株への投資で成功を収めました。

彼の投資哲学で面白かったのは「内輪話」の重要性です。投資対象企業の量的な分析に加えて、そのステークホルダー(従業員、顧客、納入業者、ライバル、業界ウオッチャー、元従業員など)から横断的に収集した意見(彼の言葉を借りれば「内輪話」)によって補強することで、正確な実態を描き出すわけです。

彼の投資手法を個人レベルで再現できるかというと非常に難しいとは思いますが、それでも短期の売買ゲームを避け、短気を起こさないでいる心持ちあたりは参考になるかと思いました。

ウォーレン・バフェットとチャールズ・マンガー

この本に登場する投資家の中でもとりわけ有名なのがこのウォーレン・バフェット氏でしょうか。そして、その長年の相棒であるチャールズ・マンガー氏も劣らず名が知られており、最近ですと彼に関する書物が出ていたと記憶しています。

バフェット氏とマンガー氏の率いる「バークシャー・ハサウェイ」の投資手法については他の書籍に詳しく述べられているかとは思いますが、1965年から50年ほどの間のリターンは年率19%を超える圧倒的なものです。

上で登場したグレアム氏に師事し彼の哲学を基に投資を進めてきたバフェット氏がマンガー氏との出会いにより、グレアム氏の原理原則から離れ独自のものを築き上げたという話は面白かったです。

バフェット氏によればグレアム氏から授かった量的分析はとても厳しいものであり、それゆえ失敗も少なかったものの、買わずに大失敗した案件がきわめて多く感じたようです。そして、ケインズ氏の次の言葉にハッとなるわけです。

困難なのは、新しい発想の獲得ではなく、古い発想からの脱却である。

そして、バフェット氏は師匠の教えの一部を脱却させ(本人曰くほんのわずかだったそうですが)、代わりに質的要素(将来の見通しや経営陣の質)をより重要視するようになります。信頼に足るべき経営陣かどうかを判するにあたり、礼儀正しさと誠実さ、平凡なことを非凡なまでにうまくやる姿勢、倹約と厳しいコスト管理、といった要素をじっくりとチェックしたうえで投資を実行して成功を収めたわけです。

あと、バフェット氏のたとえ話(パンチカードと絶好球)は示唆に富んでおり個人的にはとても好きです。

ジョン・テンプルトン

次は、グローバル・バリュー投資の大家と言われるジョン・テンプルトン氏です。

1950年代末の日本や過小評価されていた1990年代の韓国への投資に代表されるように、世界じゅうで掘り出し物を探り続けることをライフワークとしていました。

彼が1954年に創設した「テンプルトン・グロース・ファンド」は1992年に彼が資金運用の一線から退くまでの間で、平均年間利回り14.5%を誇っていました。ファンド創設時に1万ドルとうししているば200万ドルまで膨らむ計算になります。

個人的に面白いと思ったのは、投資顧問としてのキャリアを開始させる前にテンプルトン氏は人生最大の冒険旅行としてヨーロッパ・アジアの数十ヵ国を8カ月ほどの期間で回りました。この冒険旅行により、彼は世界各地にわたる人脈を磨き上げ、さらには多種多様な国々の社会が機能する仕組みを自身で徹底的に理解することができ、その後の投資キャリアに多大な影響を与えました。

また、テンプルトン氏が残した格言は投資家として参考にできるものが多くあります。

強気相場は、悲観のもとで生まれ、懐疑のもとで成長し、楽観のもとで成熟し、陶酔のもとで死ぬ

悲観主義の絶頂期は最高の買い場であり、楽観主義の絶頂期は最高の売り場である

テンプルトン氏の常にコンセンサスと反対の道を行く姿勢は神経が相当図太くないとできないと個人的には思うので、自分に向いているとは思えませんが、彼のポジティブ思考は見習いたいところです。

ジョージ・ソロス

投資界の哲学者とも評されるジョージ・ソロス氏、私もその名前だけは知っておりましたが、この本を通じて彼の投資手法や投資哲学について初めて触れました。

彼が運用した「クォンタム・ファンド」は創設からの26年間で年率約35%のリターンをたたき出しています。1969年に1,000ドル出資していれば1990年代半ばに数百万ドルに膨らむ計算です。

ソロス氏も自らを哲学者として見なしていたようで、その考え方が非常に哲学的でこの本の中では圧倒的に読み進めるのが遅かったです笑。

彼の見解を咀嚼すると、金融資産は”均衡から程遠い”価格を取り得ます。実際、彼はそれに基づいた投資を実施してきました。ソロス氏は市場価格に対する新たなものの見方を提示しており、投資家の認知が価格とファンダメンタルズを動かし、これら市場の動きが投資家の認知を形成し、この再帰的相互作用が市場価格を決め、ときにはこれが均衡から離れバブル膨張・破裂を引き起こすわけです。

ピーター・リンチ

高パフォーマンスを誇ったフィデリティ投信の「マゼラン・ファンド」のファンドマネジャーとして勇名を馳せていたのがピーター・リンチ氏です。1977年から1990年までの間にリンチ氏は年率29.2%のリターンを達成しています。これは、1,000ドルの元手が13年間で28,000ドルになる計算です。

「ピーター・リンチの株で勝つ」という本も出ていることもあり、日本でも比較的有名だと思います(同じく図書館で予約待ちです笑)。

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彼の投資手法はいわゆるバリュー投資の王道(強固な財務体質、強力なフランチャイズ、株主志向の経営陣、低い株価など)を貫いている印象ですが、何より個人投資家(特に中小型株の投資家)を勇気づけてくれます。リンチ氏によれば、プロのファンドマネジャーは様々な制約(投資対象が特定の銘柄に限定される、購入候補が安価となったときに資金流出のため購入できない等)に縛られている一方、アマチュア投資家はその制約を回避できると言っています。

あと、日々の経験が投資のヒントとなるという点は参考となります。ショッピングモール巡りほど基礎分析にうってつけの場所はなく、見方を変えればショッピングも投資にとって非常に有益な時間の使い方となるわけですね。

アンソニー・ボルトン

アンソニー・ボルトン氏は当代随一の英国人投資家であると世間一般的に認められており、彼がフィデリティ社のもとで運営するファンド「スペシャル・シチュエーションズ・トラスト」は、1980年から2007年までの28年間に年率平均19.5%のリターンをあげました。いずれの投資家のパフォーマンスが凄まじく麻痺してしまいますが、米国市場平均の過去200年の実質リターンが6~7%と言われていることを考慮すれば、皆素晴らしいですね。

彼もバリュー投資家の一人として、不人気な企業や放置されている企業、もしくは変革期を経験している企業をターゲットとして投資を実施してきました。

なかでも彼のエピソードの中で印象的だったのは「投資命題」の必要性です。投資命題とは、当該銘柄を保有した理由、もしくは当該銘柄を保有したいと望む理由を数行の文章にまとめたもののことを指し、これは子供にも理解できる内容にしなければならないとのことです。そして、これは一度作れば終わりというものではなく、定期的にテストすることの必要性を説いています。反対意見も拾いながら議論を戦わせ、今後も保有すべきかどうかを検証するわけです。

なお、本ではボルトン氏は2007年に一旦投資の舞台から降りたものの、復帰する意向を示している、という内容で終了しています。自分で調べてみたところ、ボルトン氏は2010年から中国企業を投資対象とする「フィデリティ・チャイナ・スペシャル・シチュエーションズ」ファンドの運用を担当してきましたが、見込まれたリターンは得られず、再度一線から退くこととなったそうです。

偉大な投資家たちの共通点

この本で紹介された偉大な投資家たちは独自の手法を作り上げてきた一方で、興味深いことにいくつかの共通項が見られます。これまで個別エピソードを書いてきましたが、自分でも途中から似たような内容を繰り返しているのでは、という印象がありました。

ここでは共通点を5点挙げたいと思います。

株ではなく事業とみなす

株を購入した時点で事業の所有権を一部保有していると考え、企業の根幹である事業をしっかり理解する必要があります。投資家は、証券市場の値動きを追うゲームをするわけではなく、ビジネスに携わると捉えるわけです。

長期的視点で取り組む

前項目と関連するかもしれませんが、事業とみなして株式へ投資するわけですから長いあいだ保有することを基本としているわけです。

バリュー投資で言えば、購入した株が市場参加者に注目され、評価されるまでには長い時間がかかりますし、配当再投資では複利的効果が発揮されるまでに時間を要するわけです。

ウォーレン・バフェット氏の言葉を借りると、

ゆっくり金持ちになりたい人なんていないよ

というわけです。

感情を制御する

偉大な投資家たちはブレない精神を持っており、その忍耐力は強靭です。

市場が過度に上昇もしくは下降した場合であっても、一般的な市場参加者とは異なり冷静に自分のすべき行動を取ることができます。

市場の声に耳を傾けることはもちろん大切なわけですが、快適だからという理由で群れと同じ行動をとるのがベストな選択肢ではないということです。

一貫性を持つ

今回登場した投資家たちは一人ひとり投資手法は違えども、数十年にわたる長いあいだで独自の手法に対する一貫性を持ち続ける点については共通しています。特に、その手法でなかなか良いパフォーマンスが発揮できない時でも、上記のとおり感情をコントロールして自らの手法を信じ続けてきたわけです。

テンプルトン氏に言わせれば、数年間のアンダーパフォーマンスを覚悟して受け入れろ、ということです。

失敗から学び続ける

共通項の最後のポイントとして、失敗から絶えず学び続けている点です。

本書によれば失敗は以下の3つに分類されます。

  • 不作為の失敗(大きな機会損失を逃した場合など)
  • 作為の失敗(特定の株への投資で損失を被る場合など)
  • その他の失敗(他人の失敗など)

偉大な投資家たちは企業レポートはもちろん、歴史者や伝記をはじめとする様々なものを教材として学び続けます。

失敗しない人なんていないわけで、重要なのは謙虚に失敗を受け止め次につなげることです。なにも投資に限った話でなく、これは仕事さらには人生にも効くポイントでしょう。

おわりに

億万長者の黄金律~名トレーダーから学ぶ投資の教訓」という本を通じて感じたことを書きました。偉大な投資家たちの人となり、投資手法やその背景にある哲学について広く学ぶことができる本であり、特に投資をはじめて日の浅い投資家の方にとってはおすすめです。もちろん、詳しい方でも新たな発見があるかもしれません。

想定以上に長くなりましたが、少しでも参考になればうれしいです。

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